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債権譲渡登記とは?ファクタリングに関わる登記をわかりやすく紹介

債権譲渡登記とは?ファクタリングに関わる登記をわかりやすく紹介

売掛金や賃料などの債権を活用した資金調達方法として、ファクタリングが注目されています。しかし、ファクタリング利用時に「債権譲渡登記」という聞き慣れない言葉に戸惑う方も多いのではないでしょうか。債権譲渡登記は、債権の所有者が変わったことを公的に記録する重要な制度です。本記事では、債権譲渡登記の基本的な仕組みから、ファクタリングにおける役割、そしてメリット・デメリットまで、一般の方や住宅オーナーの皆様にも理解しやすいよう丁寧に解説していきます。

債権譲渡登記とは債権の持ち主が誰かを明らかにすること

債権譲渡登記

債権譲渡登記とは、簡単にいうと「お金を受け取る権利(債権)の持ち主が変わったことを、法務局という国の機関に届け出て記録してもらう制度」です。

たとえば、住宅オーナーの方が賃貸マンションを経営している場合、毎月の家賃を受け取る権利は「賃料債権」と呼ばれる債権の一種です。事業を営む方であれば、商品やサービスを提供した後に代金を受け取る「売掛債権」を持っています。これらの債権は現金と同じように価値があり、第三者に譲渡(売却)できるのです。

債権を譲渡する際、口約束や契約書だけでは、本当に債権の持ち主が変わったのか第三者からはわかりません。そこで登場するのが債権譲渡登記制度です。この制度は平成10年に創設され、法人が行う金銭債権の譲渡について、簡便に公示できる仕組みとして整備されました。

登記を行うと、法務局のデータベースに「いつ」「誰から誰に」「どの債権が」譲渡されたのかが記録されます。この記録は登記事項証明書という公的な書類として発行され、誰でも確認できます。債権譲渡登記は、債権譲渡の事実を第三者に対抗できるようにし、公示する役割を果たしています。ただし、登記は譲渡の有効性を保証するものではなく、あくまで第三者への対抗要件を備えるための制度である点に注意が必要です。

不動産登記と同じように、債権にも「登記」という仕組みがあると考えると理解しやすいでしょう。ただし、不動産登記と異なり、債権譲渡登記は法人が行う金銭債権の譲渡に限定されており、個人事業主の方は利用できません。

債権譲渡登記が必要なのは二重譲渡を防ぎ取引の安全を守るため

債権譲渡登記が必要な理由

債権譲渡登記が必要な最大の理由は、「二重譲渡」というトラブルを防ぐためです。二重譲渡とは、同じ債権を複数の相手に譲渡してしまうことです。

具体例で説明しましょう。ある会社が100万円の売掛債権を持っていたとします。資金繰りに困ったこの会社が、A社に債権を譲渡して90万円を受け取りました。しかし、さらに資金が必要になり、同じ債権をB社にも譲渡して80万円を受け取ってしまったとします。この場合、A社とB社の両方が「自分こそが債権の正当な所有者だ」と主張し、大きなトラブルに発展します。

民法では、債権譲渡を債務者(お金を支払う義務がある人)や第三者に対して主張するためには、「対抗要件」を備える必要があると定められています。従来は内容証明郵便による通知が主な方法でしたが、大量の債権を扱う場合には手続きが煩雑でした。そこで債権譲渡登記制度が導入され、登記により簡便に対抗要件を備えられるようになったのです。

登記には「確定日付」が記録されるため、複数の譲渡があった場合でも、どちらが先に行われたかが明確になります。登記により対抗要件を備えた譲渡が優先されますが、これは譲渡契約自体が有効であることが前提です。登記は譲渡の有効性を保証するものではないため、譲渡契約が無効な場合には、登記があっても権利を主張できません。このような法的な仕組みにより、二重譲渡のリスクを大幅に減らせるのです。

債権譲渡登記は取引の透明性を高める効果もあります。債権を買い取る側(ファクタリング会社など)は、登記情報を確認し、その債権に他の権利者がいないかを事前にチェックできます。これにより、安心して取引を進められます。

債務者にとってもメリットがあります。登記がされていれば、誰が債権者なのかが明確なため、誤って元の債権者に支払ってしまうというミスを防げます。債権譲渡登記は、譲渡人、譲受人、債務者のすべての当事者にとって、取引の安全性を高める重要な制度なのです。

ファクタリングにおける債権譲渡登記の役割

ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、支払期日前に現金を得る資金調達方法です。この取引において、債権譲渡登記は重要な役割を果たします。

ファクタリング取引では、売掛債権の所有者が元の債権者(利用企業)からファクタリング会社に移転します。この権利の移転を法的に確実なものとするために、債権譲渡登記が活用されます。特に、2社間ファクタリング(利用企業とファクタリング会社だけで行う取引)では、売掛先企業に通知をしないため、登記が唯一の対抗要件となることが多いのです。

中小企業庁の資料によると、売掛債権を活用した資金調達は、中小企業の資金繰り改善に有効な手段として推奨されています。ファクタリングにおける債権譲渡登記は、この推奨される資金調達方法を法的に裏付ける重要な制度といえるでしょう。

ファクタリング会社の視点から見ると、債権譲渡登記は「債権の確実な取得」を保証する手段です。登記により、他のファクタリング会社や金融機関に対して「この債権は当社が正当に取得したものです」と主張できます。万が一、利用企業が同じ債権を他社にも売却しようとした場合でも、登記があれば優先的に債権を回収する権利を主張できます。

ファクタリングにおける債権譲渡登記の役割

一方で、すべてのファクタリング取引で登記が必要というわけではありません。3社間ファクタリング(売掛先企業も含めた取引)では、売掛先企業への通知と承諾によって対抗要件を満たせるため、必ずしも登記は必要ありません。少額の取引や信頼関係が確立している取引先との間では、登記を省略することもあります。

もちろん2社間ファクタリングでも不要な場合もあります。債権譲渡登記の必要がないファクタリング会社は、「ファクタリング会社おすすめ20選!優良サービスを紹介」や「オンラインファクタリング・Web完結17選!非対面のサービスを紹介」をご確認ください。

住宅オーナーの方がファクタリングを利用する場合、たとえば賃料債権のファクタリングでは、入居者への通知を避けたいケースが多いため、債権譲渡登記が選択されることがあります。ただし、賃料債権は継続的に発生する債権であるため、将来債権も含めた包括的な登記が必要になることがあり、通常の売掛債権とは異なる配慮が必要です。

ファクタリング利用で債権譲渡登記を行うメリット

ファクタリング利用で債権譲渡登記を行うメリット

ファクタリングにおいて債権譲渡登記を行うことは、一見すると手続きが増えるだけのように思えるかもしれません。しかし、実は利用企業とファクタリング会社の双方にとって大きなメリットがあります。登記により法的な裏付けが強化されることで、より有利な条件での資金調達が可能になったり、将来的なリスクを回避できたりするのです。

ここでは、債権譲渡登記を行うことで得られる具体的なメリットについて、詳しく見ていきましょう。

登記によって審査が通りやすくなる

債権譲渡登記を前提としたファクタリングは、審査が通りやすくなるという大きなメリットがあります。これは、ファクタリング会社にとってリスクが軽減されるためです。

登記により、ファクタリング会社は確実に債権を取得できる保証を得られます。仮に利用企業が経営難に陥った場合でも、登記された債権については優先的に回収する権利があるため、ファクタリング会社のリスクは大幅に減少します。このリスク軽減効果により、ファクタリング会社は審査基準を緩和したり、より良い条件(手数料の引き下げなど)を提示したりできます。

特に、創業間もない企業や信用力が十分でない中小企業にとって、このメリットは大きいでしょう。銀行融資では審査が通らないような企業でも、債権譲渡登記を活用したファクタリングであれば、資金調達の可能性が広がります。内閣府の規制改革会議でも、債権譲渡登記制度の活用により、中小企業の資金調達の円滑化が期待されると議論されています。

また、登記により、より高額な債権の買取も可能になります。登記なしでは100万円までしか対応しないファクタリング会社でも、登記ありなら1000万円まで対応するといったケースは珍しくありません。大型の設備投資や事業拡大を計画している企業にとって、この差は非常に重要です。

後のトラブルを防ぎ安心して利用できる

債権譲渡登記のもう一つの大きなメリットは、将来的なトラブルを未然に防げることです。ビジネスの世界では、口約束や簡単な契約書だけでは、後になって「言った、言わない」の争いになることがあります。しかし、登記という公的な記録があれば、このようなトラブルは起こりません。

たとえば、ファクタリング取引後に利用企業が倒産した場合を考えてみましょう。登記がなければ、破産管財人から「その債権譲渡は無効だ」と主張される可能性があります。しかし、適切に登記が行われていれば、ファクタリング会社は正当な債権者として認められ、確実に債権を回収できます。

税務調査においても、登記は重要な証拠となります。ファクタリングによる資金調達は売却取引であり、借入金とは異なる会計処理が必要です。税務署から「これは実質的に借入ではないか」と指摘された場合でも、債権譲渡登記があれば、正当な売却取引であることを証明できます。

住宅オーナーの方にとっても、このメリットは重要です。賃料債権をファクタリングした場合、入居者から「家賃の支払先がわからない」というクレームが来ることがあります。登記があれば、法的に有効な譲渡であることを説明でき、入居者も安心して新しい支払先に家賃を支払えます。

ファクタリング利用で債権譲渡登記を行うデメリットと注意点

ファクタリング利用で債権譲渡登記を行うデメリットと注意点

債権譲渡登記にはメリットがある一方で、無視できないデメリットや注意すべき点も存在します。費用や時間の問題、情報公開によるリスク、そして利用できる事業者の制限など、事前に把握しておくべき課題があります。これらのデメリットを十分に理解した上で、自社の状況に照らして登記の要否を判断することが重要です。

ファクタリングで債権譲渡登記を行う際の主なデメリットと注意点について解説します。

登記費用が利用者にとって負担になる

債権譲渡登記には、避けて通れないデメリットとして費用負担があります。登記申請には、法務局に支払う登録免許税が必要です。租税特別措置法による軽減措置が適用された現在の金額は、債権個数1個から5,000個まで一律7,500円(軽減額)、5,000個を超える場合は15,000円(軽減額)となっています。これに加えて、司法書士に手続きを依頼する場合は、報酬として3万円から10万円程度が必要です。

さらに、ファクタリング取引終了後には、抹消登記も必要になります。抹消登記にも登録免許税1,000円(軽減額)と司法書士報酬がかかるため、トータルでは10万円を超える費用になることも珍しくありません。

100万円のファクタリングを利用する場合、手数料が10%だとすると10万円、これに登記費用が10万円加わると、実質的な調達コストは20%にもなってしまいます。少額の資金調達では、この費用負担が大きなネックとなることは明らかです。そのため、多くのファクタリング会社では、一定金額以上の取引でなければ登記を行わない、あるいは登記なしのプランを用意しているのが実情です。

登記に時間がかかり資金調達が遅れる場合がある

ファクタリングの大きな魅力の一つは、スピーディーな資金調達が可能なことです。しかし、債権譲渡登記を行う場合、この迅速性が損なわれる可能性があります。

登記申請から完了までには、通常2〜3営業日かかります。オンライン申請を利用すれば若干短縮できますが、それでも即日での登記完了は困難です。登記に必要な書類の準備にも時間がかかります。法人の印鑑証明書、資格証明書(登記事項証明書)、債権の内容を証明する契約書など、多くの書類を揃える必要があり、これらの準備に数日を要することもあります。

登記情報が公開されることで取引先に知られる可能性がある

債権譲渡登記の情報は、手数料を支払えば誰でも閲覧できます。これは取引の透明性を確保する上では重要ですが、一方で企業にとってはデメリットにもなり得ます。

取引先や金融機関が登記情報を確認した場合、「あの会社はファクタリングを利用している」ということがわかってしまいます。日本では、ファクタリングに対してまだ「資金繰りに困っている会社が利用するもの」というネガティブなイメージを持つ人も少なくありません。そのため、登記情報の公開により、取引先からの信用を失ったり、今後の取引条件が厳しくなったりする可能性があります。

登記情報が公開されることで取引先に知られる可能性がある

特に住宅オーナーの場合、管理会社や入居者との関係性を重視する必要があります。賃料債権の譲渡登記が公になることで、「オーナーの経営状態が悪いのではないか」という不安を与え、入居率の低下につながる恐れもあります。

個人事業主は登記できないため利用に制限がある

債権譲渡登記制度の大きな制約として、法人しか利用できないという点があります。個人事業主の方は、どんなに大きな売掛債権を持っていても、債権譲渡登記を行えません。

これは法律上の制限であり、債権譲渡登記制度が「法人がする」譲渡に限定されているためです。個人事業主の場合、債権譲渡の対抗要件を備えるには、内容証明郵便による通知など、従来の方法に頼らざるを得ません。

この制限により、個人事業主がファクタリングを利用する際は、選択肢が狭まります。登記を前提とした好条件のファクタリングサービスを利用できず、より高い手数料を支払わなければならないケースも多いのです。ファクタリング会社によっては、個人事業主との取引自体を行わないところもあります。

ファクタリング利用では登記のメリットは限定的

ここまで債権譲渡登記のメリット・デメリットを詳しく見てきましたが、実際のファクタリング利用において、登記のメリットは限定的といわざるを得ません。

まず、コスト面から考えると、少額のファクタリングでは登記費用が大きな負担となります。500万円以下の取引では、登記費用が調達額に占める割合が高くなりすぎるため、多くの場合は登記なしでの取引が選択されています。実際、市場で提供されているファクタリングサービスの多くは、「登記不要」を売りにしており、これが利用者のニーズを反映していることは明らかです。

次に、スピード面でも課題があります。ファクタリングの最大の魅力である「即日資金化」は、登記を行う場合には実現困難です。緊急の資金ニーズに対応するためには、登記なしでの取引を選択せざるを得ないケースが多いのが実情です。

さらに、情報公開によるレピュテーションリスクも無視できません。主要取引先との関係を重視する企業や、地域での信用を大切にする中小企業にとって、ファクタリング利用が公になることのデメリットは、登記によるメリットを上回ることがあります。

ただし、これは登記がすべて不要という意味ではありません。高額の取引(1000万円以上)や、継続的なファクタリング利用を予定している場合、信用力に不安がある企業の場合などは、登記を行うメリットが大きくなります。ファクタリング会社から登記を条件として提示された場合は、それに応じることで、より良い条件での資金調達が可能になることもあります。

結論として、債権譲渡登記は、ファクタリング取引の安全性を高める重要な制度ではありますが、すべての取引で必須というわけではありません。取引金額、資金調達の緊急性、取引先との関係、自社の信用状況など、さまざまな要因を総合的に判断して、登記の要否を決定することが重要です。

住宅オーナーの方や中小企業経営者の皆様がファクタリングを検討される際は、まず登記なしでの取引が可能かどうかを確認してください。その上で、登記を行う場合のメリット・デメリットを慎重に比較検討することをお勧めします。必要に応じて、ファクタリング会社の担当者や専門家に相談しながら、自社にとって最適な選択をすることが、成功する資金調達への第一歩となるでしょう。

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